摂食嚥下障害(飲み込みの障害)
摂食嚥下障害とは
食べること、飲み込むことの障害のことで、上手く食べられない、飲み込めない状態をいいます。
どんな症状ですか?
症状は状態によって様々です。食べるとむせる、形があるものをかんで飲み込むことができない、食事に時間がかかる、食べると疲れる、食後に咳や痰が出る、食事を摂ると声が変わる、食べ物が口からこぼれる、飲み込んでも食物が口の中に残る、食べ物がつかえる、などがあります。そのことで摂食嚥下障害があることに気がつくことがあります。また、摂食嚥下障害により食事が上手くとれないために体重が減る、低栄養や脱水を起こす、飲み込んだものが気管に入る(誤嚥する)、飲み込んだもので窒息する、ということもあります。
摂食嚥下障害の原因は何ですか?
摂食嚥下障害の原因はいろいろとあります。新生児から高齢者までのあらゆる年齢層にみられます(下図1)。
(1)子どもの摂食嚥下障害について
脳性麻痺やダウン症などの生まれついてのご病気の方や、口やのどなど食べるために使う部位の形の異常、交通事故による脳挫傷や低酸素脳症になってしまったお子さんにもみられることがあります。食べる仕組みは生まれ持っているものではなく、経験して獲得していくものです。ご病気よるものだけが摂食嚥下障害の原因になるだけではなく、食べ方を身につけていく過程や環境(食事の大きさや固さ、食べる姿勢、食べさせ方など)が不適切な場合や乳児期の指しゃぶりなど口へものを入れる感触の経験不足なども原因の一つになると考えられています。
(2)成人の摂食嚥下障害
乳幼児期に食べる仕組みを獲得していても、成人期において脳梗塞などの脳血管疾患、神経・筋疾患と呼ばれる病気などが摂食嚥下障害の原因になることがあります。口に入った食べ物の感触や量を脳に伝えて、そこからどのような動きで食べたらいいのかといった指令があって食べる、飲み込む仕組みが営まれますが、このような病気は指令のやり取りが上手く行かなくなるために、舌が動かない、噛めない、飲み込めないなどの症状がみられることがあります。また、口やのどの癌の治療の際に手術をすると、元の形と変わったり、感覚が変わるため、食べる動きが変わることで摂食嚥下障害が起こることがあります。また、口やのどの癌を放射線で治療する場合も治療した部位が硬くなったり、感覚が変わるために摂食嚥下障害が起こることがあります。
(3)高齢者の摂食嚥下障害
加齢に伴って、食べることや飲み込むことに必要な筋力が衰えることによって、食べ物を口の中で飲み込みやすい状態にできない、舌で口からのどへ食べ物を送り込めないなどの不具合が生じやすくなります。また、のど仏の位置が下に下がることや飲み込む時にのど仏を持ち上げる筋肉が弱くなることによって、飲み込む時に気道を閉じるのに必要な分だけのど仏が持ち上げきれずに、食べ物が気管に入りやすくなる場合があります。